発電事業は、ほんの10年前まで、大規模な工場の自家発電以外は、東京電力などの電力会社の独占事業であり、発電所建設のノウハウは電力会社にしか存在しなかった。
再生可能エネルギーによる固定買取制度により、多くの民間事業者が発電事業に参入してきた。
とは言っても、最もリスクの少ない太陽光発電に集中している。
その太陽光発電にも想定外のリスクはある。
発電所を建設し運転していくためには、あらゆるリスクを想定し、対策を考えていなければならない。
国が発電事業者のためのマニュアルを作成している。
地域の再生可能エネルギー事業の健全性を 高めるための設備導入者向けマニュアル(案)
再生可能エネルギー
設備導入に係る
リスクとその対策
このマニュアルは実に200ページ以上あり、以下のそれぞれの発電および熱利用についてのリスクとその対策が記述されている。
- 太陽光発電設備導入
- 風⼒発電設備導入
- バイオマス発電、熱利用等設備導入
- ⽔⼒発電設備導入
- 地熱発電、熱利用等設備導入
- 太陽熱利用設備導入
- 温度差エネルギー熱利用設備導入
- 雪氷熱利用設備導入
電力会社の門外不出のノウハウであった発電の知識がこのような公的な機関によりマニュアルとしてまとめられ公開されるとは、さぞかし、
電力会社から技術者が流出した
と考えてさしつかえなかろう。
パリ協定、原発事故を受けて、日本は再生可能エネルギーによる自立型国家を目指している。
そうでなければ、
CO2 80%削減なんてできるわけない。
興味があった、食品残差のバイオガス発電については、
リスク
<湿潤バイオマスの場合>メタ ン発酵に伴い発生する消化液を 農地還元する計画の場合、散布農 地の確保が困難となり、計画どお りの原料を受け入れられず想定 発電量が減少したり、農地還元し ない場合は浄化放流による追加 コストが発生したりする。
対策
事業計画段階
消化液の需要先となる農地を確保するため、消 化液成分を発酵試験などにより予測し、その成 分に基づき、各農家が栽培する作物との適合性 を確認し、消化液需要量を⾒込んでおく。又は、 当初から消化液の浄化放流による処理を計画す る場合は、適正処理に必要なコストを考慮した 事業計画を作成する。
運転段階
設備稼働後、消化液中成分、重⾦属及び⼤腸菌 含有量などを定期的に分析する。肥料として使 用する場合は、肥料取締法の申請手続をしてお く。なお、下⽔汚泥を利用する場合は重⾦属が 含まれるため消化液の利用を避ける。
とある。
そもそも農協が消化液を肥料と認めるのか?
水処理施設を設置するなら、発電で利益を出すことは難しいだろう。リサイクル発電というより、下水処理場のエネルギー回収設備と同じだ。
そうなるとバイオマスの処理費を貰わないと採算が取れない。
そして、産業廃棄物処理となれば施設の許可も難しくなる。
いくつか、突っ込みたくなる部分もあるが、網羅的な内容になっており、
発電事業に携わる方なら必ず目を通しておくべき資料だ。
地域の再エネ・省エネ設備導入における事業性確保のための事前評価事業
http://www.env.go.jp/policy/local_re/renewable_energy/post_13.html