中小規模事業者のSBTのための環境省の補助金

環境省の令和5年度の概算要求の資料によると、昨年まで実施されていたSHIFT事業が補正予算のグリーンリカバリー事業を包括してパワーアップして実施されそうだ。タイトルも「脱炭素経営によるサプライチェーン全体での脱炭素化の潮流に着実に対応するための 工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)」となっていて、中身は大きく4つの事業に別れている。

①CO2削減計画策定支援(補助率: 3/4、補助上限: 100万円)

中小企業等による工場・事業場でのCO2削減目標・計画の策定を支援
※CO2排出量をクラウド上でリアルタイムで見える化し運用改善を行うDX型計画は、補助上限200万円

DX型計画とはエネマネ事業のようなものだとすれば、事業所にデマンドコントローラーを設置して遠隔操作することで省エネの監視と場合によってはデマンドレスポンスを行うシステムを導入する計画を作るということだろうか?また、いわゆる省エネ診断の補助率が昨年までの1/2→2/3となった。CO2削減ポテンシャル診断のときは100%補助であったため、診断を受ける事業者が殺到したがSHIFT事業になって補助率が1/2となり、手出しで50万円以上を出す事業が少ないので省エネ診断業界は冷えていたし、コロナ禍で事業所内の立ち入りも制限されたため、省エネ診断から撤退するところも多かった。

補助率アップでどうなることか?現状では、省エネ診断は経済産業省の省エネルギーセンターが実施する省エネ最適化診断という1日診断が破格の安値で実施されるため、民間の省エネ診断事業者が有料で省エネ診断サービスを提供し収益化することは困難な状況になっている。

②省CO2型設備更新支援


A.標準事業 工場・事業場単位で15%以上又は主要なシステム単位で30%以上削減するCO2削減計画に基づく設備更新を補助 (補助率:1/3、補助上限:1億円)

B.大規模電化・燃料転換事業 主要なシステム単位でi)ⅱ)iii) の全てを満たすCO2削減計画に基づく設備更新を補助 (補助率: 1/3、補助上限:5億円)

ⅰ)電化・燃料転換
ⅱ)CO2排出量を4,000t-CO2/年以上削減
ⅲ)CO2排出量を30%以上削減

C.中小企業事業 中小企業等によるCO2削減計画に基づく設備更新に対し、以下のi)ⅱ)のうちいずれか低い額を補助 (補助上限:0.5億円)

ⅰ)年間CO2削減量×法定耐用年数×7,700円/t-CO2(円)
ⅱ)補助対象経費の1/2(円)

この事業のAとBは従来のSHIFT事業のスキームと同じ、補助率の上限が大きいので、いまや採択率も補助金の割合も少なくなった経産省がSIIで実施している補助金より、こちらの方が有利だ。
そしてCが昨年の補正予算で実施されたグリーンリカバリー事業の後継である。いずれもCO2削減計画が必要になり、コンサルタントの出番も増えそうだ。ただし、グリーンリカバリー事業は法定耐用年数の定義が曖昧で一応税制上の年数になっているけど、実情よりかなり短い年数になっていた。

③企業間連携先進モデル支援(補助率:1/3、1/2、補助上限5億円)

Scope3削減目標を有する企業が主導し、複数サプライヤーの工場・事業場を対象とした計画策定・設備更新・実績評価を2カ年以内で行う取組を支援(金融機関も参画の場合は重点支援)

これが、SBTを意識した補助金でScope3の削減目標を持つとはSBTに取り組む大企業のことになる。取引企業の削減計画を作ることは理解できるが、設備更新の費用まで対象になるのだろうか?

④補助事業の運営支援(委託)

CO2排出量の管理・取引システムの提供、実施結果の取りまとめ等を行う。

これは例の如くみずほR&Tが担当するのだろうか?CO2排出権取引のようなものだけれど、国内クレジットはSBTでは利用できないハズなので、どのような制度設計になるのか興味津々だ。

SDGsBizのご紹介

カーボンニュートラル時代にチャレンジする企業のための会員制情報コミュニティ(オンラインサロン)を立ち上げました。2050年カーボンニュートラルを実現させるためには、自らのビジネスを今すぐ変革する必要があります。詳しくは下記の案内をクリックしてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です